骨董品買取の旅 北陸編 その2

骨董品の買取の旅を始めて、既にもう20年以上になる。
日本中、沖縄を除いて殆ど行った。

富山は山の中の集落まで隈なく訪ね歩いた。隠れ里のような集落も有って、森の中の一軒家に、かなりご高齢の男性が一人で住んで居て
何故か不二家のポコちゃん人形を一つ買わせて頂いたりした。
(ペコちゃん人形も人気だが、ポコちゃん人形はずっと希少価値があり、大人気商品だった)

富山は九谷焼の産地に近いので、実に見事な九谷焼の逸品が何気なく民家の台所にあったり、高蒔絵の塗り物のお椀が、戸袋の中に埃まみれになって無造作に置かれていたり。

関東では見れない品物をそこかしこで見る事が出来て、僕は夢中になって富山県内を走り回った。
富山では骨董品市場にも幾つか顔を出した。山寺の本堂でひっそり開催されている市場などもあり、参加しているのも麓の昔からのお爺ちゃん骨董屋ばかりで、旗師の荷物に(旗師とは、市場で仕入れた品物を別の市場へ持って来て売って利ザヤを稼ぐ骨董屋で、各地の相場に精通しているプロ中のプロ達だ)誰も声を出さずに、僕だけが「ハイ、ハイ」言って(最初に振り人の発句に対して競り上がらずに、ハイの一言で買う事)買いまくったりした。

その頃は、お金が無かったので、ホテルにも泊まれずに、日本海の強風が吹き捲くる海岸沿いの公共駐車場に車を止めて、寝たりもしていた。吹き捲くる風は、朝まで僕の車を揺らし、なんだか悲しくて、寂しくて、心細くて堪らなかったのを覚えている。