《骨董品・美術品の修復に関して  その1・陶磁器》

古い物は、長い年月人の手から人の手へ旅をしているうちに、傷がついたり割れたりします。
例えば、陶磁器。これはどうしても壊れやすい。陶磁器の修復に関しては、一般的には金直し(金継ぎともいう)があります。

これは、割れて継ぎ合わせる部分に漆を使って修理する技法で、まず漆に小麦粉や木粉を混ぜてパテにしたり、接着剤にして欠損部分を埋めたり、割れた部分を貼り合わせたりして、最後に該当箇所の表面に漆を塗布してから、それが渇かないうちに金粉を根気よく撒くのです。優れた金直しの技巧で修復された茶道具などは、さほど評価が落ちずに、金の部分が景色として愛でる対象になったりもします。

金以外にも銀を使用した銀直しもあります。
銀の場合は黒く経年変色しますので、それを見込んで景色を考えてあえて金では無く銀で直す場合もあります。

その他に、既に継承者の居なくなった修復技術に鎹(かすがい)直しという技術があります。これは、繋ぎ合わせたい部分の両方に小さな穴をあけて、鎹で繋ぐ修復方法です。大正時代位までは、鎹直し屋が家々を回って修理したそうです。

江戸時代には、焼き継ぎという技術もあり、焼き継ぎ師という専門の職人がいました。焼き継ぎ師は、小さな炉を天秤棒の片方に乗せて、もう片方には、材料の白玉(石灰硝子の粉末)と道具を乗せて、
「焼き継ぎ~」と声を掛けながら京都や江戸の市中を廻って商売をしたそうです。
具体的な技巧は、割れた部分に白玉を塗り炉に入れて700度ほどで焼いて白玉を溶かして接着しました。