《骨董の流行りと廃り  その5》

ついこの間までは、根付は根強い人気がある骨董品だった。
根付とは、江戸時代に巾着や印籠や煙管入れに結んで、帯の間に差し込んで落ちない様にした、今で言えばストラップとかキーホルダーの代わりになるモノだ。

非常に装飾性に富み、僅か数センチの中に、完璧な彫刻芸術が施された、日本独自の美術品だ(韓国や中国にも根付的な物は有るが、日本の根付とは比べるべくもない)。江戸の老舗の旦那衆がこぞって、名工の根付を買い求め、自分の富を知らしめる象徴のような存在だった。

根付の素材は、象牙の他にも鹿の骨、豚の骨、柘植、珊瑚、翡翠、蒔絵など多種多様で、海外からも需要があり、輸出用に多くの根付が作られた。
明治の初めには、まだ日本人が根付の世界的評価を知らないうちに、外国人が日本国内の根付を安く買い漁り、木箱に詰めて膨大な数の根付を持ち去ってしまった歴史がある。

名工の傑作ともなれば、サザビーズやクリスティーズで一つ数百万円で落札される根付もあるほどだ。
名工では、伊勢の正直、正次、一貫、寿玉、光廣などが有名で、江戸時代の家一軒程の価値が有ったとも言われている。
その根付のコレクション世界に今年、激震が走った。象牙の規制の締め付けである。以前から、象牙の一本物の本体は、密猟密輸を防ぐために、規制が厳しく有ったが、根付のような小さいものは枠外だったのだが、今年の春くらいから「根付も罷りならん、売買は如何なものか?」という関係官庁の御触れが出るという噂が広まったのだ。

途端にヤフオクなどでも、あれほど人気だった象牙の江戸根付が途端に動かなくなった。また、それにつられる様に、他の素材の根付も勢いが鈍くなり売れなくなってしまったのだ。

僕は、根付が大好きだったので(ちいさなミニチュアのようなモノが子供の頃から好きだった)とても残念である。悲しい。
根付コレクターには、逆にチャンスのような気がするが、なぜかそれまで熱心に蒐集してコレクター達迄、根付に対する情熱が冷やされてしまった様だ。だれも飛びつかない。

さらば根付よ・・・・・・・・。

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