神社の骨董市について(1)

 骨董品の販売方法の一つに、神社などで行われる骨董市に 出品して売る方法があります。 私は今では骨董市に出店して販売する事は有りませんが この仕事を始めたばかりの頃(20年ほど前)、2年間ほど 骨董市に出店させていただいて、糊口を凌いでいたことがあります。 その頃の私は、アンティークの店を4年の間、西荻窪で経営していて、年間の1/3はイギリスに行っていました。 一回行くと3週間は滞在して、イギリス中を周り、古い人形やミニチュアなど可愛いモノ中心に古い物を集めてきては、スーツケース3個に詰めて手持ちで持ち帰り、常連客を招いて売る事を繰り返していました。 しかし、上手く西洋骨董品が買えればいいですが、上手く行かない時も有り、そのままイギリスからフェリーでオランダに渡ったりして、なんとか品物を搔き集めて帰国していました。 その商売のスタイルに疲れ果て、このままでは、過労で死ぬかもしれないと追い詰められ、思い切って店をたたみ途方に暮れて身体きわまっていました。 その時に「そうだ、店の売れ残りを骨董市で処分して、幾らかの現金を手に入れよう」と思い立ったのが、骨董市に出店した始まりです。 その頃の私は「骨董市は〈危ない人達〉が運営、出店している〈危ない人場所〉」そんな偏見に満ちた思いが有りましたので躊躇も有ったのですが、思い切って岩の上から深い淵に飛び込むような心もちで、電話を掛けると予想にたがわず ぶっきら棒な口調の会主が「当日休みがいれば代わりにその場所に出れるけど、取り敢えず朝の5時までに来てみれば」との返答。 おっかなびっくりで、当日早朝5時に埼玉の神社に行ってみると、もうすでに沢山の業者が出店の準備をしていました。 昨日の電話の主は会主だったのですが、実際に会ってみると 以外に面倒見の良い人で、すぐに場所を割り当ててもらいビニールシートをひいて品物を並べました。 いざ出店してみると、周りに出店者も普通の人達で、特に怖い人はいませんでした。 骨董趣味が高じて売る側に転じた人や、退職後に出来る仕事として選んだ御夫婦などに混じって、西荻窪あたりで小さな店を経営している店主などが出店者の主な構成で、何も恐れる事は有りませんでした。みんな親切で助け合う雰囲気さえありました。 その日は、まずまずの売り上げで、気を良くした私は、結局その月は9か所に骨董市に出させていただき、100万円ほどの売り上げを上げる事が出来たのです。