骨董買取りのチラシを配る  その1

骨董品屋の買取業務の宣伝の仕方には色々あるが、昔からの一番ベーシックな方法にチラシのポスティングがある。
各家庭のポストにチラシを入れさせていただく事であるが、それも自分達で配るのと、業者に任せるのと2通りある。

どちらがいいかと言えば、自分達で足で回って配布した方が、明らかに効果が上がる。実際的な理由は幾つかある。まず一枚一枚配るので、
他業種のチラシに紛れにくいし、廃棄されにくい傾向にある。

また一番上になる可能性が高いので、見ていただき易い。
それに自分達なら確実に配布するし、配りたいお宅に配る事が可能だ。今はそんな事は無いと思うが、昔はポスティング業者に頼むと
全部配られてるかどうかかなり不明瞭だった時代があった。

そんな実際的な理由の他に、精神的な理由と言うか気合の問題というか、やはり一枚一枚《どうか電話が鳴りますように》と、祈るような気持ちでポストに入れるのが大切な事みたいだ。
それは、どの業種のチラシ配布経験者もみんな口を揃えて言うから間違いの無い事実なのだろう。

チラシ配りは、正直辛い。場所にもよるが、家と家が離れていたり
片側は畑だったりすると、途端に枚数がはけなくなるし、坂道などあると途端にスピードが落ちるし、鎌倉などの殆ど山登りのような坂道を見上げると、その場で立ち竦んでしまう。

チラシは、勿論紙なのでけっこう重い。500枚も肩掛け鞄に入れるとずっしりと重くなる。でも、それが1枚ポストに入れさせていただく毎に当たり前だが、ほんのコンマ数グラムづつ軽くなる。
それが100枚ほど減ると確実に、始めの頃より肩にめり込む重力が減少する。これはとても気持ちがいい事だ。

それが450枚を越える頃には、肩掛け鞄は何も入って無いと思える位に軽くなっている。それは、まるで自分の心の重圧が減るような錯覚を覚えるし、《自分の努力の印》のような気がして、少しだけ誇らしい気持ちにもなる1。

《どうだ、俺は自分に負けなかった!》でも、その頃には万歩計も1万5千歩を越えている。夢中で必死に配っているから気付かないが、かなり足にきている事が多い。
(つづく)