骨董屋の種類さまざま 《店師 3》

一等地に店を構えている茶道具屋の店師には、代々商売を継承している事が多い。息子から孫へ連綿と続く。
それから、丁稚制度的な従業員を雇っている場合もある。

いわゆる骨董屋修行である。こらは、正直言ってかなり厳しい仕事だ。勿論給料は安いし、働く量も半端ない。主人が骨董市場へ行くときは、勿論運転手兼荷運びとして付いて行かねばならないし、運転中は主人が退屈しない様に気の利いた話の一つ二つはしなければ成らない。

骨董市場に到着して、市が始まってからも、その日競られたあらゆる品物を克明に記録するのも丁稚の役目だ。
それは、本人の貴重な勉強になるし、店のデータベースにもなる。

もちろん、主人が落札したり、或いはその日売る品物の管理は怠る事無くしなければ成らない。
主人が、肩が凝れば揉むし、喉が渇けばお茶を汲んでくるし、皆が昼飯の間は、主人が午前中に買った品物のチェックと午後から売る品物の準備と、やる事は限りなくある。

下手をすると主人の友達の道具屋の荷運びや梱包まで手伝わされる事さえある。
店に帰ってからも、落札した品物の整理や、次の市の支度や、店番やなんやで休む暇は無い。
それでも、主人の人間の品格が卑しからざる人物であれば、厳しい修行も耐えられる。

でも、骨董屋、特に茶道具屋さんに性格のおっとりした紳士的な人格者みたいな人物がそうそう居る訳もなく、殆どの場合その修行は、肉体的にも精神的にも辛いものになる。

僕の知っている若者は、主人にパワハラされまくり、精神的に追い詰められて、遂には崩壊して、失踪してしまった。