骨董品買取の旅 北陸編 その4

金沢の市場では、とてもキャラクターの濃い人が沢山いた。
金沢骨董会館の西尾さんや、買い出し屋の中本さん、リサイクル屋のアイアイさんや軍隊物専門のBさん。
Bさんは、当時80歳位のお爺ちゃんで、いつも戦闘帽を被っていた。

実際に兵士として南方で戦った歴戦の強者である。Bさんは、体育館の運ような大きな店を持っていて、そこには軍隊の装備品を中心に、あらゆる金沢の骨董品が所狭しと並べられていた。僕は月に2回金沢の市場に行っていたので、帰りにBさんの店に寄って仕入れをしたものである。

福生の横田基地のカーネルだった友達のシェーン夫妻が金沢に旅行に行くと言うので、Bさんの店を紹介した。シェーンは軍隊の記念盃のコレクターで、珍しい盃を数百個も蒐集していた。

急に日本軍の軍人だったBさんの店に、現役の米空軍大佐のシェーンを行かせるのはどうかと思った。Bさんが急に記憶が蘇って、シェーンに襲い掛かったりしないかと危惧して、アイアイさんに相談するとアイアイさんは爆笑して「戦争終わって何十年やろ。な~ん、金になるちゃ、Bさんは大喜びだがいね」
僕の心配は、杞憂だった。

あとで聞いた所では、シェーンの英語とBさんの石川弁でかなり白熱した値段交渉が交わされたらしい。
アイアイさんの倉庫も良く行った。市内を流れる浅野川の畔に建つ古い工場跡を倉庫にしていて、なかなか雰囲気のある建築物だった。

アイアイさんは身だしなみにはあまり気を遣わない人で、いつも履き古したダボダボのデニムに、白いカッターシャツを着ていた。
多分カッターシャツは、どっかの骨董品買取りの現場で貰って来たのだろう。

金沢骨董会館を経営している西尾さんは、何故か僕に親切で、骨のある骨董品を安い値段で分けてくれたりした。
金沢の骨董市場は、結構荒っぽい市場で、競りの最中に些細な事から取っ組み合いの喧嘩をしている業者がいた。

そんな物騒な連中とは、知り合いにならなかったが、常識のありそうな地元の業者とは沢山仲良くなった。
本当に金沢はいい街である。