茨城県の土蔵からエンタイアを買取しました

明治時代の封筒(エンタイア)のヤマ

本日は茨城県の旧家にお伺いして、エンタイアを買取させて頂きました。霞ケ浦を通って行ったのですが、葦が揺れて水面が初夏の日差しに煌めいてとても気持ちが良かったです。 エンタイアとは、封筒や葉書に切手が貼ってある状態で、スタンプが押してあるものの事で、熱心な蒐集家の多いコレクターアイテムです。 日本の郵便システムの誕生は、1871年(明治4年)です。 日本初の郵便切手、竜文切手が誕生しました。 これは通貨制度が江戸時代と同じ<文>を使用した額面表記で、竜の文様がデザインされていた為、そう呼称されました。 翌年になると、額面が<銭>に変わり、竜銭切手と呼称されるようになりました。 切手の場合は、未使用品の場合の方が使用品より価値が高い事が殆どですが、エンタイヤの場合は、使用してスタンプが押してあり、封筒か葉書に貼っていないと意味が有りません。 昭和の40年代から昭和の終わり位まで、空前の切手収集ブームで、こぞって切手を集める人が多かったのですが、現在はそのブームは下火になり、コレクターは減少しましたが、エンタイアの蒐集家は 一向に減らず、むしろ増えています。 エンタイア蒐集のポイントは、まずは切手の希少性、次に消印の珍しさ。明治時代の郵便制度に於いては、幾つも郵便局を経由して、あて先地に郵便が届けられました。その経由地ごとに消印が押されたので、一通のエンタイアに幾つもの消印が押されています。 その組み合わせの珍しさもまた蒐集のポイントの一つです。 郵便制度が始まった最初の消印は、ただ<検査済>と大きく押された抹消印なのですが、その表示だけでは不便だったためにすぐに表示地名が加わったタイプに切り替わったために、<検査済>の抹消印だけのエンタイアはとても珍しく、今では1通数百万円するものも有ると思われます。 次にポイントになるのは、投函地と到着地です。 例えば、明治時代は、外国から来る郵便物や外国に送る郵便物は珍しかった為に、現存すれば非常に価値が高いです。 また、自衛隊がペルシャ湾に派遣された時は、艦内に臨時特設郵便局が設けられたのですが、その郵便局の消印が押してあるエンタイアは珍しいので、コレクターが縁故を頼りに、派遣自衛隊員を探して郵便物を託したりしたものです。 意外に思われるかもしれませんが、差出人や受取人の名前は殆どと言って良いほど蒐集のポイントにはなりません。 どんなに著名な人物でも、切手と消印と投函地、到着地が凡庸だとエンタイアとしての価値は有りません。 ただし、その場合はエンタイアで無く、手紙の内容としての価値判断になります。 例えば坂本龍馬の手紙は、数百万の価値がある場合は有りますし、内容が歴史的な新事実で有ったりしたならば、とてつもない価値がある場合もあります。 以前、岩手県の某市旧家の蔵の整理をさせて頂いた事が有ったのですが、その折に大量の明治時代の中期頃のエンタイアが出てきました。 その市は宮沢賢治の生誕地に近い市でした。 宮沢賢治の活躍したのは大正時代なので、残念ながら時期がずれていました。 時期が有っていたら、宮沢賢治の手紙などもあったかもしれません。 もし有れば、1通200万円はくだらないでしょう。 いずれのしろ、それはエンタイアとは別のモノです。 エンタイアはあくまでも、封筒または葉書に切手が貼って有り、消印が押印してあるモノを言います。 珍しい投函地と到着地(例えば、小笠原諸島から沖縄など)、珍しい切手、珍しい消印の組み合わせが揃えば、数千万円の価値が有るモノもあります。 興味の無い人から見たら、そんな事になんの価値があるのか?って思いますよね。 エンタイア蒐集は、まさにその世界に憑りつかれた人間にしかわからない趣味の王道と言えるかもしれません。